浅間隠山という名を記憶にとどめたのはもう半世紀以上も昔のことだ。熊谷高校国語科は年に一度旅行に出かけることを常としていた。K先輩が音頭を取ってくれた。人のあまり行かないひなびた温泉をよく見つけてくれた。その一つが浅間隠山の北にある薬師温泉で、爽やかな谷川のほとりにあるいい温泉宿だった。浅間隠しとはどういう意味か。浅間という名峰を隠してしまう山なのか、火砕流などの恐ろしい災厄を遮ってくれる山なのか。その地に生きた人たちの思いは、休養に出かける我々の感覚と隔たっていることもあるのではないか、そんなことを考えたまま何年も過ぎて、或る年一人で二度上峠から登ってみた。二度上峠なんて名前もおもしろい。
浅間隠山は本庄から見ると屹立した円錐形に見えて斜度が大きく見えるのだが、実際にはなだらかな山だった。1757mの頂上から見る三六〇度の大展望がうれしくて、その後何人もの人たちを案内した。孫娘は目の下に広がる雲海に歓声を上げた。本庄北高PTAOBも感銘が深かったのか、記念写真をCDのジャケットに飾ってくれた。
 

 

 豪華な写真集を作ってくれた友もいる。中学時代の同級生グループが雪山に行きたいという。浅間隠山であれば安全だと4人で出かけた(2002.2.1)。常念岳や宮之浦岳へ同行した一人は私が写真は後ろ姿が雰囲気があっていいと言ったことを覚えていて、いい写真集を作ってくれた。そのカバーとなった写真は私が気に入っているもののひとつである。向かいの山は角落山と剣の峰。

2003.02.01
本庄7:35=二度上峠9:20~30ー頂上12:10~13:25ー登山口14:50~15:05=亀沢温泉15:30~16:40=本庄18:20
倉渕の部落を過ぎて道の両側に雪。予想が甘かったと述懐する男も。登山口で気温―5℃、快晴谷川岳方面に雪雲あり。積雪30㎝。ただしトレースがしっかりついていてラッセルなし。尾根に出て浅間隠しのへの登り口までの間、風の通り道あり。登りに入って間もなく私はワカンヲ装着。他の3人も簡易アイゼンをつける。ただ、新雪が深くアイゼンは爪が効かない。無風状態の中汗をかいて登る。稜線へ出るとブッシュの上に空の青さが濃い。夏道90分のコースを約3時間かかって頂上へ。雄大なパノラマが我々を待っていた。目の前に大きく浅間、噴煙がやや多い。南の雲の上に赤岳から天狗岳までの八ヶ岳。その左に金峰から甲武信・雁坂嶺までの奥秩父。その間から富士。浅間の右には黒斑の絶壁、さらに右へ四阿山。来る前、頂上は雪は風で飛ばされているのではないかとの予想は外れ、1mを越える積雪。頂上で雪を踏んで固めて昼食をとる。ビールが美味、コーヒーも。下りはワカンが快適。足がつって尻セードで下った一人もいた。楽しい一日となった。

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