2004.08.09 熊が走り下った
本庄5:10=更科IC6:35=扇沢登山口8:10~15-種池山荘12:05(泊)
扇沢登山口駐車場は満車。5分手前の道路わきに駐車する。出発すればいきなり急登。40分の辺りで上方斜面をガサガサ音をさせて何かが走り下る音がする。さらに5分歩くと中年夫婦あり。「熊が出た」と興奮している。先ほどの音の正体ならん。運転後ということでスローペースで歩いるつもりが、一人の男に追い上げられてハイペースとなる。それが因となり最後の1時間が苦しくなる。ガスの中、息を喘がせて立ち止まりつつ歩を進めると目の前にぽっかりと種池山荘が現れた。2時間ほど前、尾根上に見た小屋は気が遠くなるほど上方だったが。
時間はまだ早い。宿泊手続きの前に小屋前で持参のラーメンで昼食。一番搾りの500mℓが美味かった。
宿泊は同じブロックに60代後半のカメラを担いだ男と50歳ほどの男。50男は昨日冷池小屋泊りだったという。超満員で酸欠の心配をしたほどだったとのこと。槍・穂高が好きなようで、最短ルートは新穂高温泉から滝谷沢を渡り、南岳へ出るルートという。17時夕食。夕刻より遠雷が鳴り雨降る。18時過ぎ止んで夕陽が出、爺岳東斜面の沢に入りこむ虹が出現する。窓から鹿島槍と針の木をスケッチする。
2004.08.10 イワツバメの風を切る音が頭上に
朝食5:00出発5:40-爺岳南峰6:35~45ー中峰6:50~55ー赤岩尾根分岐7:30~40ー冷池山荘8:00~05ー布引岳9:05~15ー鹿島槍南峰10:16ー北峰10:50ー吊尾根雪田11:00~50ー南峰12:20~40ー布引岳13:20~40ー冷池山荘14:15(泊)
5時前、ガスの中を写真撮影の男が出発。5時朝食。5:40に出発できた。爺岳への登り5分のところで完全装備のカメラマンが下りてくるのに出会う。ガスで何も見えなかったと情けない表情だ。しかし登るにつれてガスが切れ、南峰では鹿島槍が姿を見せ、中峰下りでは槍穂高も姿を見せた。道はだらだらの長い下り。明日の帰りが大変そうだ。新築の冷池山荘に着き、不要な荷物を預けて軽くしようかと迷ったが、そのまま出発する。テントサイトの横で昨日登りで一緒だった男が下ってくるのに出会う。6時、一番晴れた時に頂上に立てたという。今日は信越山荘泊りで明日針の木を下るという。笑顔を交わして別れた。お花畑が美しい。
布引岳までのコースタイム1時間40分は誤り。1時間で着いた。ガスの中ほんの一瞬頂上が見える時があり、カメラを構えて待ったが空しかった。登山道の中央にマツムシソウが踏まれずに美しい。すぐ上を行く女性グループが突然騒ぎ出し、「雷鳥がいる」と指さす。雛を2羽連れた親鳥がすぐ横を通る私を全く警戒しない。中年女性たちは「餌、餌」ととんでもない会話を交わしている。
登るにつれてガスは濃くなり、鹿島槍南峰に着いた時は全く眺望なし。にぎやかな南峰を素通りして北峰を目指す。道はいきなり急な岩場の下りとなる。昨日の男が「昔は何でもなかったところも年を取ると怖くなる」と言った、その言葉を思い出しながら下る。下りに下って北峰とキレット小屋への分岐まで来ると、そこが吊尾根の雪田だった。ザックを置き空身で頂上往復。頂上には中年夫婦が一組いるのみで、下ろうとするところ。カメラのシャッターを押してもらう。往復15分で吊尾根へ。そのまま雪田に下りてラーメンの昼食をとる。30年前ビバークした場所は変わっていなかった。懷かしさに動けなくなる。キレット小屋から何人か上がってきたが雪田には下りずに通っていく。イワヒバリも來て自分だけの場所、自分だけの時間があった。カップで掬ったざらめ雪が何とも言えず美味く、何とも言えず美しく輝いた。
昼食後の登りはきつい。南峰直下まで来てとうとう等距離を開けて歩いてきた女性に追い抜かれた。南峰ではガスの晴れ間を狙う人たちが何人もカメラをかかえていたが、チャンスなく皆戻っていった。南峰だけで帰って行く人たちがほとんどだ。なぜだろう。家族連れの母親にシャッターを押してもらい、こちらも押してあげて下山する。今回の山行もこれで終わると思うと下るのが惜しい。布引岳でも大休憩をとる。腰を下ろす頭の上をイワツバメがシュッシュッと何度も何度も音を立てて飛びぬけていく。こんな音を聞くのも初めてだ。
東面にお花畑が広がり、ホタルブクロ、トリカブト、アキノキリンソウ、トウヤクリンドウ、ウサギギク、シシウド、アザミ、ひげとなったチングルマ、クルマユリ等々がガスの中美しい。私を抜いた女性を布引平で抜き返して冷池山荘に到着。
宿泊手続きを済ませ、生ビールのジョッキをもって上のベンチへでる。老年夫婦がいて、どちらから?と声をかけられる。2週間かけて百名山を登っているという。此処へ来る前は番場島から剣岳に登ってきた。鹿島槍に登った後は平ヶ岳へ行く予定とのこと。山の話を自慢話でなくできるのはうれしい。お陰で生ビールをお替りすることとなった。
7月9日にリニューアルオープンしたばかりの山荘は豪華なもの。トイレも水洗で、洗面所もある。飲み水以外は天水で、水は尽きていた。夜は誰とも話を交わさず眠る。
2004.08.11 青空の下、鹿島槍が輝いた
話声で4時に目を醒まさせられる。若者が、鹿島槍に登るが南峰と北峰があるのも知らぬという。向かいの老人に、地図を各人で持たずにもし迷子にでもなったらどうすると叱られている。下へ降りてダクロンのTシャツを買う。5時の朝食後、人々が走って外へ出るのについてベンチへ出るとすでに朝日は上っていた。素晴らしい天気だ。青空の下に輝く鹿島槍を撮る。最後の日に絶好の条件に恵まれた。
昨日と同じ05:40に出発。赤岩分岐で鹿島槍を背景に撮影。途中で噴煙をまっすぐ噴き上げる浅間が雲海の上に顔を出し、右手には剣、立山が朝日に輝いている。爺岳中峰頂上へは寄らずトラバースルートで眞直ぐ南峰へ。蓮華岳の左に槍・穂高、その左に燕、大天井、常念。雲海の彼方には南アの北岳・仙丈・駒と八ヶ岳が。蓮華の右には針の木・すばり、さらに右に立山と剣が全部見わたせる。なんといっても鹿島槍の雄姿がうれしい。下山するのが惜しくなり、スケッチをし、1時間も眺望を楽しんで、ようやく下山へ。スケッチ中は針ノ木岳。スケッチ下は蓮華岳を越えて槍・穂高の遠望。種池山荘で生ビールでもと思いつつ到着すると、20名もの団体が出発するところ。あの人たちの後ろになったら大変と、そのまま素通りして列の先に立つ。そのまま下りに下って扇沢に出る。前回のようにあの水に頭を突っ込みたいと期待したものの、休憩なしで下まで飛ばす。最後の堰堤の上の岸にザックを下ろす。思う存分顔を洗い、頭を洗い、沢の水を沸かしてコーヒーを入れ・・最後の充実した時間を持った。
カテゴリー: 2004 鹿島槍ヶ岳