谷川岳から北へ一ノ倉岳、茂倉岳,東へ折れて武能岳、蓬峠と辿って南へ湯檜曽川を下るコースは私の好きなものの一つだ。土樽から蓬峠へ出て、谷川岳へというのもいい。50年前家族4人でそのコースをとったことがある。朝の武能への登りで笹原を分けてズボンを朝露でびっしょりにした。茂倉から一ノ倉への鞍部で、頭の上まで出るほどの荷を背負ったスーパー老人と出會った。小学生の少年が可愛らしくてと、先方から声をかけてきた。年を聞いたら82歳という。この歳になるとどこへテントを張っても、変な爺さんがいると誰も文句を言わないとも。妻は同じ年ごろで死んだ父親を思い出したらしく涙ぐんでいる。写真を撮らせてくれと、少年二人をカメラに収めて去って行った。口ぶりからどこかの山岳会の大物であろうと思われた。
その蓬峠から先七つ小屋山、清水峠、朝日岳、笠ケ岳、白髪門と、湯檜曽川をぐるっと回って土合に出るコースを馬蹄形というらしい。
蓬峠からすぐ北に非常にユニークな山容をした山がある。ピラミッドのようでもっと鋭く尖っている。調べてみると大源太といって、上州のマッターホルンとよばれているという。たまらなく行ってみたくなった。いつもの山仲間に声をかけて3人で出かけることとした。

2000.10.21
本庄13:10=湯沢IC14:40=旭原林道終点15:00(幕営)
日帰りで行けるコースらしいが、もう急ぐ山旅はしたくない。のんびり行こうと登山口にテントを張った。ビールと日本酒で久闊を敘した。山仲間はいい。

2000.10.22
天場7:00-大源太山頂10:30~50-七つ小屋山12:10-シシゴヤ分岐12:40~13:40—シシゴヤの頭14:50~15:00-旭原16:40=本庄19:30
大源太川にそって緩やかな道を登っていく。渡渉地点を過ぎる所から道が急となり、頂上に近づくほど急登となる。全山紅葉の真っ盛りでうれしい登りだ。10時30分1597mの山頂に到着。狭いが平らな頂だ。謙信尾根を越えて、巻機山から朝日岳に伸びる稜線上の柄沢山の突起が見える。何人もいた人影は旭原に下りていく。残ったのはわれわれともう一人だけ。
そのもう一人は眼下の絶壁のような下りを見て臆したようで、「私はここから戻ります。」と言って帰ってしまった。慎重に三点確保で100mほどを下った。そこから先はなだらかな稜線で一面の草紅葉。他に誰もいない我々だけの世界がうれしく、やがて池塘も現れるとますます先へ進むのが勿體なくなる。それでもやがて馬蹄形に合流して七つ小屋山(1676m)に到着。眼下の湯檜曽の谷のガスに向かって紅葉の絨毯が落ち込んでいく。この先1567地点でまた馬蹄形からはなれてシシゴヤの頭までのんびりと下る。ここから九十九折れの急降下となり、朝の道に合流。16時40分登山口の車に到着して無事を祝った。いい山だった。

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