大雪山から十勝岳まで辿ってから16年経つ。白雲から高根ケ原そして忠別へのプロムナードを紹介したくて妻を誘う。五万図で見ても、これほど緩やかな稜線はほかにない。期待が膨らむ。
1988.8.08
本庄06:19=羽田08:50/09:50=千歳11:30/12:26=旭川14:35/15:00=旭岳温泉16:20
1988.8.09
旭岳温泉幕営場06:47ーロープウエイ発車場07:10=終点07:25ー姿見池07:47/08:00ー旭岳10:15/50ー間宮岳(昼食)12:00/38ー北海岳13:25/35ー白雲岳分岐14:50/15:00――白雲岳天場15:25
ロープウエイからはじめてトムラウシ・オプタテㇱケ・噴煙の十勝を見る。トムラウシは堂々としていい山だ。あの横を通った時のことを思い出す。姿見池への途中、足元にシマリスを見る。人を恐れず逃げない。鳴きリスの姿も。砂地の頂上から北海岳へ。さらに白雲のトラバースルートから下って白雲の天場へ。前回ヒグマの姿を見て小屋に避難した場所だ。今日は姿を見ない。
1988.8.10
白雲岳天場06:17ー忠別沼09:55/10:17ー忠別岳(昼食)11:00/12:15ー忠別避難小屋天場13:50
白雲天場から緩やかに下って高根が原へ。目の届く限りコマクサの群落。一本目(最初の休憩)でヒグマ対策としてコッヘルの蓋に空き缶をセットする。時折すれ違う人たちの付けている鈴やカウベルの澄んだ音色と大違い。ガランガランと鳴り響く音響は、却ってヒグマがなんだろうと不審に思って寄ってくるのではないかと冗談も飛び出す。ヒグマ除けならぬヒグマ寄せなるべし。
平ヶ岳の頂上とも呼べぬ頂上で絶壁の縁に休んでプラムを食べる。目の下に原生林の緑に囲まれた高原沼が青空を反射して美しい。沼から沼へ登山道が見え隠れして続いている。危険なルートとの注意表示があるコースだが上からはヒグマの姿は発見できない。先ほど源頭の雪渓を通過したヤンベタップの谷が深い。
小さな礫の続くコマクサの原をあるいて、なだらかな丘を登って忠別沼へ。先に行くのがもったいなくてつい休んでしまう。沼の美しさのみならず、空も青く深かった。飛行機雲が白く輝いて延びていく。ハイマツ帯を潜り抜けて忠別岳頂上へ。ガスカートリッジで湯を沸かしラーメンの昼食をとる。山のラーメンはうまい。ここまでと逆に西側は足元が見えないほどの絶壁なのに、東側はなだらかなスロープで見事なお花畑だ。ここから先、五色が原から化雲岳まで同じ構造だ。忠別川に削られたカルデラなのだろうか。
13:50忠別岳石室横の天場に着いて、のんびり歩いた。2日目はここまで。雪田の下の沢は水量が豊かで、手の感覚がなくなるほど冷たい。夕刻キタキツネが訪問してきた。何気なく天幕の入り口を開けたところ、1メートル先に四つ足を踏ん張ってきょとんとした顔でぼくを見ていた。目と目が合って、何とも愛らしい。キツネもどうしたらよいか戸惑ったようだ。妻を呼ぼうとしたが、次の瞬間身をひるがえして走ってハイマツの中に消えた。この山行のみならず、この夏通して最大の収穫となった。
1988.8.11
忠別岳天場05:00ー五色岳06:50/07:10ー神遊びの庭ー化雲岳08:25/53ー小化雲手前ピーク09:45/10:00ー小化雲トラバースルート10:25ー池塘湿原12:05/40ー羽衣瀧展望台14:25/40ー天人峡温泉15:20/17:35ー旭川駅18:40
3時の目覚ましは気付いたものの眠気に勝てず起床4時過ぎ。朝の陽射しの中汗をかいて五色稜線へ出る。頂上からトムラウシが正面に大きく、スケッチする暇もじゅうぶんないほどにたちまちガスが遮る。此処から化雲までお花畑のプロムナードだ。青空の下でガスの名残をまとうチングルマの綿毛が美しい。注意して見て気付いたことだが、赤いチェーンを巻いたような可憐な綿毛だ。神遊びの庭も動きたくなくなる所だ。雪田から滴る水のうまさ。この辺に幕営したら最高だろう。
トムラウシの王冠に似た雄姿を左にしつつなだらかな草原を化雲岳へ。金峰の五丈岩に似た岩塊をもつユニークな頂上だ。オレンジに蘇生の思い。
ここから長い下りが始まる。旭岳・白雲岳を目前にして初めはお花畑の中を緩やかに、やがてハイマツ帯に入ると標高差200メートルの急傾斜となって1515天人峡温泉に着く。山旅はここまで。温泉に汗を流して旭川駅へ向かう。
1988.8.12-13
旭川(特ライラック4号)08:00=札幌(快速マリンライナー)09:34/10:56=黒松内14:32/16:29=長万部(特北斗12号)16:56/17:23=函館(快速海峡16号)18:46/54=青森(特はくつる)21:14/48=大宮06:12/31=本庄07:29